待つ力
待つ力スマートフォンでネット上の情報につながるまで、どのくらい待てますか――時計メーカー「シチズン」が行った意識調査によると、6割以上の人が「10秒以内」と答えた。コンビニのレジでは1分。待たされると、3割を超す人がイライラを感じるという▼近年のIT技術の進歩により、生活は格段に便利になった。スマホで調べ物をすればすぐに〝答え〟が分かったり、ネットで買い物をすれば当日に届いたり。〝待たなくてもいい時代〟と言えるかもしれない▼ただ、「待つ」ことを即、不便とだけ捉えるのはいかがなものか。精神科医の春田武彦氏は、「精神的に裸となった自分と対峙しなければならないのが『待つ』という営み」と指摘する(『待つ力』扶桑社新書)。思い通りにならない事態になっても、感情的になったり、さじを投げたりせず、一度立ち止まる。待つことで状況が変わる場合もある。待つという行為は、精神的な成熟の証しなのである▼新が他コロナウイルス感染拡大への一人一人の対応にも、忍耐強く「待つ」ことが求められる。不要不急に外出をやめ、密閉・密集・密接を避けることに徹したい▼現在の困難に無関係な人は一人もいない。皆が当事者として、賢明に粘り強く、自他の健康を守り抜こう。 【名字の言】聖教新聞2020.4.10