竜門の滝
青空を悠々と泳ぐこいのぼりのイメージが強いが、幼い頃、鯉が泥水でもすめる魚だと知り驚いたことがある。 生命力が非常に強く、寒さにも負けない。陸に揚げられても、長時間、生きられる。「淡水魚の王様」と呼ばれるゆえんだろう。そのたくましさは、中国の有名な故事「竜門の滝」にも描かれる。「竜門と呼ばれる滝を登り切った鯉は竜になる」という、立身出世を象徴する伝説だ。 滝の落差は300メートル以上。流れは、放たれた矢よりも速い。それ以上、漁師や飢えた鳥たちから命を狙われる。日蓮大聖人はこの故事を通して「仏になるみち(道)・これにをと(劣)るべからず」(御書1560頁)と仰せだ。困難に負けず、人間として向上し続けることは、それほど難しい。 (略) 子らに示すべきは“栄誉栄達”への登竜門そのものではない。利害損得の渦巻く社会にあって、「何のため」の理想を忘れず、人間性の高みへ登り続けることの美しさである。たくましい鯉のように。 【名字の言】聖教新聞2018.5.4