高校生参加デモ
作 家 六草 いちか高校生になる娘が学校から帰宅し、パソコンでなにやら調べものを始めた。ずいぶん熱心にモニターを覗き込み、しばらくして「ティーティップって何?」と聞いてきた。うまく聞き取れずスペルを訊ねると“TTIP”だという。「テー・テー・イー・ペーじゃないの?」とドイツ語のアルファベットを言うと、娘は溜息をついて見せた。これまで新聞を読むだけだったから、そのように発音するとは思いもやらなかった。「アメリカとの貿易交渉のことでしょう?」と言うと、彼女はきょとんとした表情をみせた。宿題かと訊くと、明日のデモに行くことになったからなんのデモか知っておきたかったという。デモは抗議したいことがあるから参加するものではないのか? 大いに疑問を抱いたが、クラスメートがみんな行くから、友だちづきあいも大切なのだと彼女は言った。それで夜は親子で勉強会となった。先週土曜日、ベルリンの中心部で環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)およびEU・カナダ総合経済貿易協定(CETA)に反対するデモが行われた。一般市民をはじめ様々な企業・団体が参加し、抗議した内容は大きくふたつに分かれた。ひとつは協議が不透明なまま進んでいることに対して。もうひとつは、食品の安全基準への懸念。これまでEUで禁じられてきた遺伝子組み換えや成長ホルモン使用の食品が市場に出回ることに、国民は非常な危惧を抱いている。当初、10万人と予想されていた参加者は、25万人にふくれあがり、近年稀に見る大掛かりなデモとなった。【すなどけい】公明新聞2015.10.16